【まちの見本帖】現地取材レポート・尾道市瀬戸田編|Staple・小林亮大さんに学ぶ、島に根差すことで生まれる豊かな暮らしと観光の両立

【まちの見本帖】現地取材レポート・尾道市瀬戸田編|Staple・小林亮大さんに学ぶ、島に根差すことで生まれる豊かな暮らしと観光の両立
2021年より全国の先進的なまちづくりに取り組む人・会社を紹介してきたまちびらきイベント「まちの見本市」は、この秋より調査チームを発足!出店してくださっている方が活動するまちへ訪れ、その活動の裏側や詳細を調査していきます。
そして、その調査のプロセスと考察をお届けするために、事業者の取り組みを“媒介”という観点でまとめる調査ブック「まちの見本帖」、まちの風景を広めるポッドキャストシリーズ「まちの見本録」を公開中です。
この調査レポートでは、調査の様子の一部をお届けいたします。
今回は、広島県尾道市瀬戸田町。国内外からサイクリストが訪れる「しまなみ海道」の中央に位置し、「レモンの島」としても知られる瀬戸田町・生口島(いくちじま)で、商店街を起点とした島の活性化に取り組む小林亮大さんを取材しました。


尾道港からフェリーに約40分乗船し、生口島・瀬戸田港へ。瀬戸田港から島の観光名所「耕三寺」まで続く、約600メートルの通りが「しおまち商店街」。Staple/しおまち企画が活性化に取り組むエリアです。長年愛されるお土産店や飲食店の中に、新しいスポットが次々と生まれています。


その一つが、2021年にオープンした「SOIL Setoda」。港から徒歩1分の場所にある、新築棟2棟と築140年の塩蔵をリノベーションした棟の3棟からなる宿を中心とした複合施設です。新築棟はいずれも2階が客室で、1階にはレストランやショップなどが入っており、蔵ではコーヒーロースタリー「Overview Coffee Japan Roaster」が営業しています。滞在中は取材チームもこの「SOIL Setoda」に宿泊しました。

こちらは、2025年11月に開業したばかりの新棟。2階は客室、1階はライブラリーとセレクトショップが一体となったスペース「Kokage Books」となっています。まちの図書館としても機能しており、宿泊者だけでなく島に暮らす人々も本を借りに来るそうです。

この「1階が店舗、2階が宿泊施設」という形態は、しおまち企画が手がけている商店街の空き家活用事業「ショップハウスプロジェクト」の特徴です。宿泊施設を併設して収益性を上げることで、1階に入るテナントの幅が広がります。これまで商店街になかったお店がたくさん生まれ、地域の人にとっても観光客にとっても魅力的なエリアになることを目指しています。
さて、宿を出たら瀬戸田のまちを歩いて巡ります。しおまち企画の立ち上げメンバーである、西日本旅客鉄道株式会社(JR西日本)の内藤真也さんが案内してくださいました。

1999年にしまなみ海道が開通して自動車でも気軽に島を訪れることができるようになった一方で、海上交通の需要は衰退。瀬戸田港を利用する人が激減し、港近くの商店街からも賑わいが失われてしまいました。
今から10年近く前に初めて瀬戸田を訪れた内藤さんは、「港の求心力を上げて商店街に活気を取り戻そう」と考えるようになったといいます。そして自転車ごと乗船できるサイクルシップの導入や宿の誘致、しおまち企画と商店街の組合が共同開催するまちづくりワークショップなど、さまざまな取り組みを行ってきました。

最初に案内してくれたのは、港の待合室にあるコインロッカー。しまなみ海道で結ばれた島々の宿泊施設と連携しており、午前中に荷物を預ければ指定の宿まで届けてくれるのだそう!この画期的なコインロッカーは、「サイクリスト客が増えたものの、お土産を買ってもらえない」という地域の声を事業化したもの。瀬戸田では、ワークショップなどを通じて出てきた声をていねいに拾い、まちづくりに反映させていることがよくわかります。

次に訪れたのは「ボナプール楽生苑」。社会福祉法人新生福祉会(瀬戸田町)が運営する複合施設です。柑橘の搾汁ができる加工場をはじめ、誰でも泊まれるホテル、ショップ、シェアキッチンなどが併設された施設では、障がいのある方々が明るい表情で加工作業や客室清掃などの仕事をされているのが印象的でした。
「しおまち商店街」に戻ると、世界的なホテリエが手がける宿「Azumi Setoda」。かつて製塩や廻船問屋として財を成した豪商・堀内家が所有していた築140年の屋敷を引き継ぎ、歴史と新しさが溶け合う空間へと生まれ変わっています。

その向かいにあるのは、泊まれる銭湯「yubune」。地元住民の「島に温泉がほしい」という要望から生まれたそうです。地元民向けのお得な回数券も販売しており、島内の常連さんも多いのだとか。こちらも1階が銭湯、2階が客室となっています。
「Azumi Setoda」と「yubune」はAzumi Japanが運営していますが、Stapleが運営する「SOIL Setoda」の宿泊客も「yubune」の銭湯を利用できたり、「yubune」には飲食店がないため「SOIL Setoda」のレストランでモーニングを楽しんだりと、宿泊施設がお互いに持っていない機能を補うように送客しあい、回遊が生まれているのも瀬戸田の特徴だと感じました。

年間宿泊者数はこの約5年で1万人から5万人へと増え、宿泊施設も2006年には15軒だったところ現在は30軒以上へと拡大している瀬戸田。私たちが滞在した日も、多様な国籍の観光客がまちを歩き、港やカフェで思いおもいの時間を過ごしていました。特別感のある旅館からカジュアルなホテルまで幅広い選択肢の宿がそろう瀬戸内の島は珍しく、さまざまな目的を持つ人が訪れやすくなっていると感じました。

まちを案内してもらった後は、レモン収穫体験へ! しおまち企画が提供しているアクティビティの一つで10月~5月に開催されています。私たちが訪れたときはちょうどグリーンレモンのシーズン。黄色く熟す前の青々とした果実は、キリッと爽やかな香りが魅力です。

瀬戸田は全国1位のレモン生産地。瀬戸田レモンは無農薬・有機・自然農法のいずれかの方法で栽培されており、皮ごと楽しめるのが特徴です。私たちが収穫した畑では、炭や小魚を肥料に使う有機農法が実践されていました。
温暖な気候のもと、太陽をたっぷり浴びて育った採れたてのレモンを、畑でレモンソーダにして味わうひととき…。澄んだ青空と深い緑のレモン畑、潮風の心地よさに包まれながら、その土地の産業を五感で知ることができました。


驚いたのは、島外からの参加者がとても多いこと。このワークショップのために市外・県外から訪れた人もおり、地域の方々もまた、「外からの視点」を積極的に聞いているのが印象的でした。瀬戸田のまちに活気と可能性が生まれている理由の一端を垣間見たように思います。
Podcastでは、ショップハウスプロジェクトやまちづくりワークショップ、さらには「せとだレモンマラソン」や「しまなみ映画祭」といったイベントにも取り組まれている小林さんに、大学時代の世界一周旅行で得た価値観や瀬戸田と関わり始めたきっかけ、この数年で感じるまちの変化などを伺いました。

ぜひPodcast「まちの見本録」もあわせて聞いてみてくださいね!
また、小林さんの瀬戸田での活動(株式会社Staple/株式会社しおまち企画)の詳細については、来年発刊される調査ブック「まちの見本帖」にも掲載します。合わせてお楽しみください!
株式会社Staple
公式サイト:https://staplejp.com/
株式会社しおまち企画